俳句の作り方 初夏の俳句
初夏に開く郵便切手ほどの窓 有馬朗人ありまあきと
1⃣しょかにあく ゆうびんきって ほどのまど
2⃣しょかにひらく ゆうびんきって ほどのまど
初夏が夏の季語。
1⃣の解釈。
新緑のすがすがしい時節、山を登った作者。
遠くに洋館が見えます。
郵便切手ほどの小さな窓が開きました。
初夏に開く郵便切手ほどの窓
2⃣の解釈。
開くをひらくと読んだらどうでしょう?
上の句が6音になりますが、作者が郵便切手ほどの窓をあけたことになります。
「あく」だと自動的にあいたことになります。
しかし「ひらく」だと作者が能動的にひらいたことになります。
私はこちらの解釈が好きです。
句意を申し上げます。
すがすがしい初夏がやってきた。
この素晴らしい季節の中で私(作者)は未来に期待している。
希望と言ってもいいかもしれない。
それは雄大なものではないけれど、確実に私の胸に宿っている。
今は郵便切手ほどの小さな希望だけれど、ぐんぐん大きくなる。
初夏に開く郵便切手ほどの窓
有馬朗人について・・・。
1930年生まれ。2020年没。
原子核物理学者であり政治家。
15歳から作句を始める。
16歳で「ホトトギス」初入選。
師は山口青邨やまぐちせいそん。
初期の作風は、伝統俳句に対立する新感覚派をさらに乗り越えたもので、
「日常の中に超現実的なイメージを探し求める傾向」。(wikipedia)
海外詠も数多く、最終的には伝統俳句へと回帰した。
初夏に開く郵便切手ほどの窓
この句は初期の作品で「日常の中に超現実的なイメージ」(同じ)が色濃い。
私も➁の解釈の句が魅かれます。
初夏の季節に希望をもっている作者が羨ましく思います。
反対に今の私はこの初夏の素晴らしい季節に、希望とやらを持つことが出来ません。
今の私の心情を句にしたら 「夏来たる存在不安の街過ぐる」 ですね。